ハードウェアトロージャンの研究Research on hardware trojan

ハードウェアトロージャンとはICチップや回路基板に密かに挿入された不正回路のことで、5G向けLSIへの混入の懸念がニュースで取り上げられると広く注目されるようになりました。研究のゴールは、ハードウェアトロージャンの動向を把握して、対策法を検討・情報発信し、企業と連携して対策を普及することです。

従来の多くの検知手法では、不正回路を含まない参照チップ、すなわちゴールデンサンプルを用いるのに対して、我々はゴールデンサンプルに頼らない検知方法の開発にチャレンジしています。光学顕微鏡を用いたチップの観察環境を立ち上げて、2つの回路比較像、動作部分の発光像、赤外光による透視像を得る事に成功しました。論文を網羅的に調査し、ハードウェアトロージャンの独自分類を提案しました。分類毎に有力な検知方法が対応付けられる点が特長で、共同研究等で活用予定です。

ハードウェアトロージャンを、実装・起動方法・動作特性の観点で分類しました。一つのハードウェアトロージャンはそれぞれ3つの観点で属性を付与できると想定しています。分類されたハードウェアトロージャンは、ツリーの各枝ごとに異なる特徴を持つのでそれぞれの特徴を利用した検知が可能となると予想されます。

論文リスト

  • 林優一, 川村信一, "ハードウェアセキュリティの最新動向: 3. ハードウェアトロージャンの脅威と検出." 情報処理 61.6 (2020): 568-571. (招待論文)
  • Y. Hayashi, S. Kawamura, “Survey of Hardware Trojan Threats and Detection,” Proc. of the 2020 International Symposium on Electromagnetic Compatibility (EMC Europe 2020), Virtual Conference, September, 2020.
  • 川村 信一, 今福健太郎, 坂根広史, 堀洋平, 永田真, 林優一, 松本勉: “半導体チップのハードウェアトロージャンに対する物理レベルの取り組み(I)”, 電子情報通信学会, 信学技報HWS2019-65, ICD2019-26, pp.47-52, 2019-11.
  • 川村 信一, 林優一: “国内外におけるハードウェアトロージャン研究動向”, 電子情報通信学会, 信学技報HWS2020-23, 54-58, 2020-10.
  • 坂根広史, 川村 信一, 今福健太郎, 堀洋平, 永田真, 林優一, 松本勉: “半導体チップのハードウェアトロージャンに対する物理レベルの取り組み(II), 電子情報通信学会, 信学技報HWS2020-24, pp.59-64, 2020-10.