暗号化したままでのデータ解析技術に関する研究

暗号化した状態でデータの演算や分析ができる暗号技術(準同型暗号)に関する研究を行っています。特に、暗号化データの分析者権限の柔軟な制御を行うことができる準同型暗号の研究に取り組んでいます。

近年のスマートフォンや各種クラウドサービスの浸透により、クラウドを利用した様々な商用サービスが発展してきています。特に、個人の情報を集積・統合して計算された統計情報を利用し、個々人に特化して価値の高いサービスを提供することが可能となってきており、今後益々そのようなサービスが増えていくと考えられます。このようなサービスでは、外部の第三者はもちろん、サービスの提供者に対してでさえも、集積・統合された統計情報から分かること以外の個々人の利用者のプライバシー情報が守られている必要があります。

このような目的のために有用と考えられる暗号技術として、暗号化したままデータに対し様々な演算を行うことが可能である「準同型暗号」と呼ばれる公開鍵暗号技術があります。準同型暗号で暗号化したデータは、暗号化状態のままでのデータ処理が可能であり、これにより利用者のプライバシーを守ることができます。提案しました。予測モデルとして線形回帰に着眼し、その有効性を実験的に示しています。情報セキュリティに関する国内シンポジウムCSS2016において、本成果を発表しました(文献*1)。

しかし、従来の準同型暗号では、集積・統合後のデータを復号できるサービス提供者は、演算前の個々人のデータも復号できてしまうという問題点があり、結果として、プライバシーが十分守られないという問題が生じえます。また、暗号化データ上の演算権限の制限が難しいという問題もあります。

本研究では、これらの問題を解決した、新たな準同型暗号を提案しました。具体的には、暗号文の宛先を変更可能とする暗号技術である代理再暗号化の機能を準同型暗号に適用し、暗号化データの演算権限の柔軟な制御機能を実現しました。また、本成果は、情報セキュリティに関する国内シンポジウムSCIS2016において発表されました。

(本研究は、三菱電機株式会社と共同で推進しています)

論文リスト

    • Satoshi Yasuda, Yoshihiro Koseki, Yusuke Sakai, Fuyuki Kitagawa, Yutaka Kawai, Goichiro Hanaoka: Verifiable Privacy-Preserving Data Aggregation Protocols. IEICE Trans. Fundam. Electron. Commun. Comput. Sci. 103-A(1): 183-194 (2020)
    • Yutaka Kawai, Takahiro Matsuda, Takato Hirano, Yoshihiro Koseki, Goichiro Hanaoka: Proxy Re-Encryption That Supports Homomorphic Operations for Re-Encrypted Ciphertexts. IEICE Trans. Fundam. Electron. Commun. Comput. Sci. 102-A(1): 81-98 (2019)
    • Satoshi Yasuda, Yoshihiro Koseki, Yusuke Sakai, Fuyuki Kitagawa, Yutaka Kawai, Goichiro Hanaoka: Formal Treatment of Verifiable Privacy-Preserving Data-Aggregation Protocols. ProvSec 2018: 415-422