塚本 明
Akira Tsukamoto
経歴
神奈川県で育ち高校卒業後に福岡県立九州歯科大学歯学部歯学科に進学し1994年卒業。歯科医師として働きながらコンピューターが好きであったため友人のサーバー構築を手伝う。この時に海外のハッカーからのサーバー攻撃との攻防を経験し、ルーターのファイアウォールなどによる防御術を身に着ける。
コンピューターとの出会いは中学生時代のマイコン雑誌から始まりデジタル技術書などにて独学し、高校生の時に8bit マイコンのBIOSのリバースエンジニアリング経験や、ソフトのコピープロテクション外しやROMカートリッジコピー基板制作などにて知識を得る。この時の手配線によるデジタル回路制作の経験は人生でその後の回路基板設計に生きる。
歯学部在学中はDOSの解析を行いUSBメモリー(当時はフロッピー)の削除ファイル復活技術を身に着ける。またビデオチップのメモリーをCPUからノーウェイトで高速にアクセスする方法を思いつきデジタル回路の設計を行う。この時の知見がその後のCell/B.E. のプロジェクトでの高速化や OpenCL などの GPGPU の最適化 [1] [2] に役立つ。
5年ほど歯科医師として働いた後に一般的な開業の道に進まず、米国に留学。2003年コロンビア大学コンピューターサイエンス学科にてMSc in Computer Scienceを取得。在学中にInternet Engineering Task Force (IETF)にて策定のSession Initiation Protocol (SIP、今のVoIPやVoLTEで主流の通信方式) とReal-time Transport Protocol (RTP、Apple Quick Time などで主流の動画配信方式) による世界で初めての音声・画像・画面共有・テキストチャット機能を持つテレビ会議システム [3] の研究開発に従事。オープンとクローズドの両方のソースコード混在での開発方法を得られた貴重な経験となる。この時のプロジェクトではパケットロスや順不同パケットやジッターを生じるインターネットにおいて通信品質の確保を担当し、パケットの送受信処理のリアルタイム性を上げるために Linux kernel 内部の開発に携わる。
ソニー・コンピュータ エンタテインメント勤務時代、Cell/B.E. CPU の Linux プロジェクトに従事。この時開発を協力したIBM Cell Blade 製品によるスパコンRoadrunnerが世界で初めて1PFLOPSを突破し2008年から2009年までTOP500のランキングで1位を獲得。
現在、産業技術総合研究所 サイバーフィジカルセキュリティ研究センター 暗号プラットフォーム研究チーム 主任研究員。CPU、OS、ハードウェア全般の技術開発の経験をもとに現在はCPU のセキュリティーに関する研究開発と標準化に従事。
具体的にはIETFのTrusted Execution Environment Provisioning (TEEP)プロトコルを策定中 [4] 。IETFではTEEP とSoftware Updates for Internet of Things (SUIT)とRemote ATtestation ProcedureS (RATS) を合わせて、ソフトウェアと個人情報のインストールやアップデート方法の技術開発と規格化を行っている。対象とする機器はエッジコンピューティング機器やIoT機器やデータセンター機器などインターネットに接続された機器である。インターネットの規格化を実現することで標準的な方法でインターネット接続された機器のセキュリティー向上を目的としている。
他に余暇時間に RISC-V International の RISC-V Ambassador を務めており、定期的にRISC-V 勉強会 [5] を開催。ときどきRISC-V のLinux kernel の開発 [6] を行う。
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[1] Multicore Application Runtime System (Mars) on Cell Linux
ftp://ftp.infradead.org/pub/Sony-PS3/mars/1.1.5/mars-docs-1.1.5/html/index.html(FTP のリンクですので現在の web ブラウザーでは開けませんので、読むには FTP ツールを使ってください。)
基本原理はSIMD演算が非常に速いSPEコアをアクセラレータとして最大限のパフォーマンスを出すために、タスク並列の考えでアクセラレータ側のSPEが自律的に実行関数をメインメモリーから取得して実行できる機能を提供するライブラリ。その後 CUDA 等も同じアプローチをとる。 - [2] Marsの元になった設計は John Bates 氏が OpenCL規格に反映させる
https://www.khronos.org/registry/OpenCL/specs/opencl-1.1.pdf - [3] テレビ会議システム CINEMA
http://web.archive.org/web/20020607235317/http://www.cs.columbia.edu/IRT/cinema/
パケットネットワークの挙動をエミュレートするツール
http://www.cs.columbia.edu/~hgs/research/projects/newudpl/newudpl-1.4/newudpl.html
QoS 計測ツール
http://www.cs.columbia.edu/~hgs/research/projects/rtpqos/rtpqos-1.0/rtpqos.html
RTPQOS の結果を反映した中で公開されている部分、大半のソースコードは非公開
https://web.archive.org/web/20100223100919/http://www-out.bell-labs.com/project/RTPlib/
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[4] Trusted Execution Environment Provisioning (TEEP) Protocol
https://datatracker.ietf.org/doc/draft-ietf-teep-protocol/ - [5] RISC-V勉強会
https://risc-v.connpass.com/ - [6] kernel RISC-V
https://patchwork.kernel.org/project/linux-riscv/list/?submitter=200103
職歴
1987 - 1994年 福岡県立九州歯科大学歯学部歯学科卒業、学位Doctor of Dental Surgery
1994 – 1999年 医療法人 朋優会 一般歯科医師
2001 - 2003年 Columbia University in the City of New York、学位MSc in Computer Science
2003 – 2004年 株式会社東芝 正社員
2004 – 2006年 日本電気株式会社 正社員
2006 – 2011年 株式会社ソニー・コンピュータ エンタテインメント 正社員
2011年 Nomovok Ltd. 正社員
2011 - 2016年 Linaro Ltd. 正社員
2017年 トヨタ自動車株式会社コネクティッド先行開発部 常勤嘱託
2018年 産総研 情報技術研究部門SPC テクニカルスタッフ
2018年 産総研 サイバーフィジカルセキュリティ研究センター テクニカルスタッフ
2019年 産総研 サイバーフィジカルセキュリティ研究センター 主任研究員
論文業績 (代表的な5件)
- Ronaldo Serrano, Ckristian Duran, Trong-Thuc Hoang, Marco Sarmiento, Khai-Duy Nguyen, Akira Tsukamoto, Kuniyasu Suzaki, and Cong-Kha Pham, A Fully Digital True Random Number Generator With Entropy Source Based in Frequency Collapse, IEEE Access 9 105748 - 105755 July/2021
- Ba-Anh Dao, Trong-Thuc Hoang, Anh-Tien Le, Akira Tsukamoto, Kuniyasu Suzaki, Cong-Kha Pham, Exploiting the Back-Gate Biasing Technique as a Countermeasure Against Power Analysis Attacks, IEEE Access 9 24768 - 24786 Feb/2021
- Kuniyasu Suzaki, Akira Tsukamoto, Andy Green, and Mohammad Mannan, Reboot-Oriented IoT: Life Cycle Management in Trusted Execution Environment for Disposable IoT devices, Annual Computer Security Applications Conference (ACSAC), Dec/2020
- Kuniyasu Suzaki, Kenta Nakajima, Akira Tsukamoto, and Tsukasa Oi, Library Implementation and Performance Analysis of GlobalPlatform TEE Internal API for Intel SGX and RISC-V Keystone, The 19th IEEE International Conference on Trust, Security and Privacy in Computing and Communications (IEEE TrustCom) Dec/2020
- Trong-Thuc Hoang, Ckristian Duran, Duc-Thinh Nguyen-Hoang, Duc-Hung Le, Akira Tsukamoto, Kuniyasu Suzaki, and Cong-Kha Pham, Quick Boot of Trusted Execution Environment With Hardware Accelerators, IEEE Access 8 74015 - 74023 April/2020